平和と非武装化

平和

だから、平和や互いの向上に役立つことを追い求めようではありませんか。

ローマの信徒への手紙 14章19節

平和を告げ知らせるということは、平和に向けた折衝を呼びかけることではありません。
聖霊による一致が、多様な違いすべてに調和をもたらすと確信することです。聖霊による
一致とは、新しい有望な総合によって、あらゆる対立を克服することです。

使徒的勧告 『福音の喜び』230

われわれはイエスの教えを宣教する弟子として、癒し、和解させ、橋を架け、預言者的な
対話を通して互いの理解を作り出すように召出されている。異なる文化の間を取り結ぶこ
と、宗教間の対話、そして社会から取り残された人々および搾取されている地球との連帯
は、われわれが神の使命に参与する方法であり、三位一体の神との交わりへとわれわれを
召出している。イエスの福音の告知は、平和の共同体を築くようわれわれに促している。

聖コロンバン会総会 2012
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平和と非武装化

聖コロンバン会は、人種差別と戦闘の暴力行為、軍事独裁、経済面・環境面の不正が広く
見られる国々で生活し奉仕する歴史と伝統を有している。この経験が、われわれに他者と
共に活動することで、平和・正義・人種間協調に反対する態度・行為・構造を変えようと
する動機となっている。弾圧に直面しても内面の幸福、公正な社会・経済構造、積極的非
暴力を反映する平和と非暴力の文化を奨励し、あらゆる生き物ならびに地球と互いにつな
がりあう感覚を育成する、無限に広がるキリストのような平和を推進することを選択する。

ユネスコの定義によると、平和と非暴力の文化とは「平和構築、仲介、紛争の阻止と解決、
平和教育、非暴力の教育、寛容、受容、相互尊重、異文化間・宗教間対話ならびに和解に
献身すること」である。この洞察に霊感を得て、聖コロンバン会は宣教生活を生き抜こう
とする。

聖コロンバン会の懸念

貧困の暴力

『福音の喜び』で教皇フランシスコは、経済システムが世界の直面する大きな問題の一つ
であると書いている。「排除と不平等の経済にはノー」と言って、排除された者たちを依然
として待たせたままにしているトリクルダウン理論を批判している(53-55)。

貧困は人間の尊厳に対する暴力のかたちである。それは人間の完全な発達の可能性を制限
する。ある人たちにとっての経済的繁栄が多くの人たちのいっそう深刻な貧困を意味して
いる。不公平な富の分配のためにまっとうな住居や教育、医療、有意義な雇用の機会に欠
ける人々の顔、特に女性とこどもたちがわれわれには見える。特にわかってくるのは[移
民となって]追い出される経済的要因で、人身売買の犠牲者および移民とその家族に対す
る暴力的情況を生んでいる。

フランシスコ教皇は2015年世界平和の日のメッセージで、人身売買犠牲者や移民の奴
隷労働は悲惨であり、「人間による人々の搾取という増大する災難は、共に交わる命をひど
く傷つけ、尊敬・正義・愛による人と人との関係を築くというわれわれの召出しをおおい
に損なうのである」と述べている。

自然界への暴力

地球を破壊することは、平和の構造を引き裂くことである。地球そのものが受ける暴力は
戦争でもあり、生き物の生息地の破壊、あるいは戦闘で使用する武器や技術のため地球の
資源を採出することで行われる。例えば、チリ、ペルーやアマゾン流域のような場所での
天然鉱物の採掘が、韓国チェジュ[済州]島での米国支援の軍事基地建設など、アジアで
の軍事目的にいかに利用されているかわかっている。この基地建設はそれ自体も海の生物
の破壊、水質汚染など環境に悪影響がある。

天然資源の獲得競争の結果として多くの国や地域社会は対立状況にある。化石燃料の世界
的需要があるため、天然資源の入手をめぐり軍事政策が推進されるのはその一例である。
飲料水、生きるための食料源、適切な住居状態など基本的人権を守る手段が損なわれてい
ること、大規模鉱業があるため土地利用が限定されることなどはすべて、世界中に数え切
れないほどある地域社会の脆弱さをさらに深刻化させる。環境問題から起きる紛争は、し
ばしば民族的・宗教的に隔てられた境界を超えることがあり、そのためいっそう激しい暴
力や闘争へと向かうことがある。

宗教的原理主義と過激主義の勃興

ここ数年、過激な行動に出るグループが増えている。アルカイダ、タリバン、いわゆるイ
スラム国、ボコ・ハラム、アル・シャハブなどである。彼ら自身がイスラム的であるとす
る極端なイデオロギーを支えとするが、それは真のイスラム教に由来するものではなく、
彼らの主張は拒絶されなければならない。過激主義のイデオロギーが、経済的資源、地政
学的緊張、イスラム教内部の宗派間闘争、西側諸国の誤った介入とあいまって、死や苦悩、
恐怖を現実にしてしまっている。

パキスタン、フィリピン・ミンダナオ島、その他の場所で聖コロンバン会が経験したとこ
ろでは、イスラムの兄弟姉妹たちは平和のために献身しており、あらゆる種類の暴力、特
に宗教の名のもとに行われる暴力を拒絶している。他の信仰伝統を保持してきた宗教指導
者たちとの対話や学術的研究、平和・和解・環境問題イニシアチブなどの共同プロジェク
トを通して、正義・平和・被造物のケアに対する彼らのコミットメントがよくわかるので
ある。

原住民権利の尊重

聖コロンバン会は世界の各地で原住民とともに働いている。チリのマプチェ族、ミャンマ
ーのカチン族、ニュージーランドのマオリ族、パキスタンのパルカリ・コリ族、フィリピ
ンのスバネン族、台湾のアタヤル族[タイヤル族ともいう]などである。これら共同体の
文化、土地、信仰伝統は非伝統的な生活様式や習慣によって脅かされているので、彼らの
直面する脆弱性は理解できる。あらゆる人々の土地と文化は神聖であると信じるので、わ
れわれは互いに尊重、協力する関係を築くよう奮闘努力する。

軍事力拡張の動き

軍事力は防衛と安全保障のため必要として推進され、大多数の国家は武力闘争を外交政策
上、容認できる手段とみなしている。しかし、われわれの経験と歴史が示すのは、軍事力
が平和をもたらさず、腐敗や不正にまみれた構造や政権の埋め合わせをすることができな
いということである。暴力的軍事クーデターや独裁政権に耐えてきた多くの国でのわれわ
れの生きた経験からわかるのは、そのような政権は、自国内で平和と安全保障の調停者と
して喧伝しながら、実際は分裂や抑圧を産み、暴力的な文化を作っていることである。

われわれは戦闘を軍事的にも経済的にも危険をかけた企てとみる。世界中で軍隊駐留を展
開し、軍需産業を拡大することは、聖コロンバン会が育てようとする平和の文化を蝕むも
のである。何十億ドルもの金額を費やして、さらに致死的で精緻な殺傷と環境破壊の方法
が研究開発され、宇宙空間への進出まで対象となる。経済的現実が軍事力拡張の文化に貢
献、これを促進することになり、そこから多くの人々が直接的・間接的に利益を享受して
いる。

核兵器、ドローン、完全自動化された武器

2015年は日本の広島と長崎の原爆投下攻撃から70年目であった。聖コロンバン会は
ほぼこの70年間ずっと日本および、核兵器政策・保有が地球の平和と安定の脅威となっ
ている世界各地で奉仕してきた。パックス・クリスティ・インターナショナルのメンバー
として、われわれは核兵器の非合法化を求める呼びかけに参与し、現存する核兵器の数を
ゼロに削減すべきと訴えている。

劣化ウランの武器使用は空気、水、土壌、そして人間の身体も汚染する。核兵器の廃絶だ
けでなく、いかなる形でもウランを含むあらゆる武器の廃絶のため、他者と協同していく
必要がわれわれにはある。

同様に、現代のハイテク戦争ではドローンや完全自動化された武器が破壊・偵察・監視の
ためにますます使用されている。聖コロンバン会が奉仕する二つの国であるが、特に米国
とイギリスは軍事政策と実践でドローンと完全自動化武器への依存を高めている。例えば、
2004年以降、米国はパキスタンに対して何百回もドローン攻撃を仕掛け、三千人から
四千人の死者を出したと推計される。ドローン使用の特質ゆえ懸念されるのは、無辜の市
民を殺傷し共同体を損傷するこの武器の潜在力である。聖コロンバン会はパックス・クリ
スティ・インターナショナルのメンバーなど世界の他の宗教指導者たちと一緒になって、
すべての政府がこの問題についての国際的討議に参加し、完全自動化武器の開発・生産・
使用の禁止に向け動くよう呼びかけている。

拷問と強制的失踪

カトリック教会によれば、「人権に関する国際法は、いかなる状況下でも違反できない原則
として、拷問の禁止を正しく表明している。」残念ながら、聖コロンバン会は拷問の実践・
政策の影響を見てきている。それはひとりの人間が他の人間に対する最も深刻な暴力行為
のひとつである。われわれはどんな状況下であっても、いかなる拷問をも拒絶し、あらゆ
る拷問の実践を終わらせることが世界平和の構築に不可欠であると信じる。

強制的失踪という残酷な行為にも強く反対する。聖コロンバン会の奉仕する国々、特にラ
テンアメリカやフィリピンなどで、軍事独裁政権によって拘束され、失踪させられた人々
の運命について、真実を求める家族の努力を支えている。

聖コロンバン会の対応

異宗教間・エキュメニカル対話

神学者ハンス・キュングの言葉「宗教間の平和なしに国家間の平和はなく、宗教間の対話
がなければ宗教間の平和もない」がわれわれに思い起こさせるように、対話は今のわれわ
れの時代で平和をもたらす試みにおいて決定的要素のひとつである。誤解を払いのけ、調
和を築くために共に働くことによってのみ、永続的な平和がもたらされる。例えば、フィ
リピン・ミンダナオ島で聖コロンバン会は異宗教間活動グループと共に活動しているが、
非常に困難な状況における平和プロセスの重要な役割となっている。

変革の提唱

暴力および経済・環境上の不公正の根本原因を取り上げる統合戦略の一環として、われわ
れは構造変化がもたらされるよう活動することに専心する。戦争や自由貿易、環境の過剰
消費という方策が地域社会と自然界に及ぼす構造的原因と組織的影響がわれわれには見え
ている。オーストラリア、チリ、アイルランド、韓国、ニュージーランド、ペルー、フィ
リピン、台湾、イギリスそして米国などの国々にある聖コロンバン会宣教センターはすべ
て、経済・社会・環境面での暴力を生む政策を推進する地方・中央政府に異議を唱える活
動に関与している。

非暴力の実践

聖コロンバン会の歴史を通じて、われわれのメンバーは軍事政権や当局の監視下で投獄、
誘拐、追放の目に遭ってきた。また積極的非暴力や、社会から取り残された共同体との活
動に傾倒してきたために殺害されることもあった。脆弱な共同体との活動のゆえに聖コロ
ンバン会が被った暴力は、われわれの非暴力運動へのコミットメントを深めただけである。
われわれの経験する暴力は、奉仕する共同体が受けている暴力や、われわれの生活する国
の政権がもたらす暴力に比べれば限定的であるのがわかる。

聖コロンバン会の定義では、積極的非暴力とは以下のように記述される。「非暴力とは、人
間の不可侵性に基づく。それは行動ある生き方を求める。つまり、明確な主張をもち、想
像力に富み、組織的で先制的な行動である。この行動は不正を根絶し、ついには和解をも
たらすことを目的とする。」

また別の方法では、聖コロンバン会は自然界との関係において非暴力活動を実践する。わ
れわれは被造物に対するケアと尊敬の表現として、質素に生きることに努める。地域社会
の教育と動員活動を援助する。そして変革提唱など連帯の努力を通してわれわれの国際共
同体とつながる。

信仰の形成

信仰ある人々や共同体に働きかけて、カトリック社会教説の視点から平和問題の理解と活
動を促すことは、聖コロンバン会の使命の一部として不可欠である。信仰形成はさまざま
な場所と状況で起こる。教区、学校、大学、宣教センター、短期の宣教奉仕、そしてイン
ターネットや出版物などである。オーストラリアのコロンバン・ミッション・インスティ
チュートは平和問題や非暴力についてもっと学びたい教育担当者のためにワークショップ
やインターネット教材を提供している。イギリスでは、平和教育イニシアティブについて
コロンバンJPICがパックス・クリスティUKと密接に関わりながら活動している。

出版物・意識を高めること

インターネットと出版物、平和運動によって、批判的思考・行動と深い祈りの内省を呼び
かけている。以下はその例である。

  • オーストラリア - コロンバン・ミッション・インスティチュート
  • イギリス ― 対立と気候 DVD
  • 日本 - グローバル第9条キャンペーン
  • 韓国 - セーブ・チェジュ・ナウ・キャンペーン
  • フィリピン - スバネン・クラフツ
  • ナイアル・オブライエン神父 SSC こころからの変革
  • ナイアル・オブライエン神父 SSC 悲しみの島、希望の島

ネットワーキング

聖コロンバン会は、平和と関連問題に取り組む数多くの国内・国際ネットワークおよびパ
ートナーシップに参与している。

パックス・クリスティ・インターナショナルおよびパックス・クリスティ 地方と国内
支部
  • パチェ・エ・ベーネ
  • 軍事支出に関する国際キャンペーン
  • 戦争撤廃のための運動
  • 核非武装化のためのキリスト者運動
  • 核非武装化のためのキャンペーン
  • ドローンによる戦闘
  • 武器取引の反対キャンペーン
詳細紹介先:
エイミー・ウーラム・エチェヴェリア
正義・平和・被造物保全のための国際コーディネーター
amywe@columban.org
1.301.503.9222/skype awe0106
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