温暖化・気候変動

目次

聖コロンバン会 正義、平和、創造が完全であること

気候変動はカトリック教会の最重要事項の一つであるべきだ。教会が
その使命は世界の命の繁栄のためであると本当に信じるのなら。

ショーン・マックダナー SSC

温暖化・気候変動

聖コロンバン会は、社会や世界から取り残された人々および搾取された地球と
の連帯によって表現された対話を通して癒しと和解をもたらし、橋を架け、相
互理解を生むために召し出されている。(1) 神の啓示としての生態系の生物多様
性を守り、神の創造である地球とその生物に耳を傾けるよう、われわれは呼び
かけられている。気候変動のような生態系の危機を通して語りかけられている
のである。
隅に追いやられ、搾取された共同体や自然世界とともに生きるというわれわれ
の会の体験ならびに聖書、カトリックの社会教説そして科学は、あらゆる地球
生物との適切な関係を取り戻す方法の探求にわれわれを駆り立てる。特に気候
変動は、人類をも含む何十万もの種にとっての生を困難にする、桁違いの大き
な地質的変化をもたらす恐れがある。気候変動の現実は、個々の人間および共
同体において進行中の、環境保護のための回心へとわれわれを招き、そうした
回心は個人の生活様式と社会構造の両方の変化につながる。
創造の現実を中心に据える神学から得た洞察の結果として、倫理的態度がもは
や神および他の人間との関係のみに限定されてはならないと実感できる。その
態度はわれわれとあらゆる地球生物との関係にも拡大適用され、含めなければ
ならない。

聖コロンバン会の懸念

人類の引き起こした気候変動は、今日の世界が直面する最も深刻で切迫した生
態系への挑戦であり、人間世界と自然界の双方に広範な影響を及ぼす。気候変
動は、地球の限りある資源の分配と利用、そして生物多様性と生命の網の目の
破壊に関して深刻な道徳的・倫理的懸念を引き起こしている。
あらゆる地上の生物は人間の引き起こした気候変動のゆえに脅威にさらされて
いる。その気候変動は、公共の善よりも利益を優先する経済モデルが推進する、
化石燃料の過度の消費とそれへの依存によって大部分はもたらされている。聖
コロンバン会が特に懸念するのは、気候変動の悪化における採取産業の中心的
役割および、安全な水と健全な食物の入手・利用に対して気候変動の与える影
響である。

気候変動を倫理的問題と考えない失敗

脅威である気候変動の現実‐‐気候変動は進行しており、何百万もの人間とその
他の被造物に痛み、苦しみと死をもたらすだろう。人間も他の生物も、とりわ
け居住地・生息地の喪失のために、大規模レベルの絶滅の危機に直面している
‐‐は、全世界のわれわれの教会共同体にはまだ深刻な影響を与えるに至ってい
ない。政治・経済の政策決定者たちや教会指導者たちがほとんど認識していな
いのは、今日の地球規模経済のもつ飽くことない要求がどれほど徹底的に生命
体の網の目を引き裂いてしまうかという規模と、それが将来世代にもたらす破
滅的結果である。

平和に対する脅威

世界の安全保障への増大する脅威である気候変動の結果、共同体同士はますま
す対立葛藤状態にある。きれいな水や入手可能な食料源の利用、適切な生活状
況のような基本的人権の享受も制限され、大規模採掘事業が土地利用を縮減す
るのなら、すべてこれらの状況は世界中の無数の共同体の脆弱性をさらに悪化
させる。獲得競争が暴力につながることも多い。そうした紛争対立は民族や宗
教の境界線をしばしば超えて、さらに激しい暴力や戦争に向かうことがある。

健康に対する脅威

医療関係者は気候変動を「地球規模の21世紀最大の健康に対する脅威」と表
現し、数百万人の大気汚染による死の一因とする。他方、炭素集約度の低い社
会への移行は空気をきれいにし、能動輸送を増加させ、食生活をより健康的に
するなど、健康面で多くの共通の恩恵を促進する。

持続可能な経済モデル

フランシスコ教皇は『福音の喜び』の中で、「このシステムは、利益増大の妨
げになるあらゆるものを滅ぼす傾向があり、唯一のルールになっている神格化
された市場の利害の前では、環境のような壊れやすいものはどんなものも無防
備である。」–56。気候変動は、経済成長の継続を基盤とする現在のネオリベ
ラル経済パラダイムに大規模な困難をもたらしている。気候変動で明確になっ
たのは、地球という惑星の生き物構造に甚大なダメージを与えずに、限りある
世界での経済成長継続は不可能ということだ。

気候変動による移住者

気候変動ゆえの移住・居住地域退去は、規模と重要性において増大し続ける。
極端な天候、砂漠化、海面上昇、良質な食料確保の機会削減は、すべて人々を
移住に追い込む要因である。国連会議のような国際的な法的枠組みで、気候変
動による移住者のためにふさわしい保護策を用意する必要がある。

誤ったエネルギー解決策

さらなるエネルギー源を探求する中で、原子力、バイオ燃料、水圧破砕法利用
などの代替エネルギー策が持続可能・更新可能な解決策としてしばしば推進さ
れる。しかしこれらの代替策は環境・生態系に深刻な懸念を生じさせる。われ
われは持続可能な低炭素エネルギーシステムへの迅速な移行を推進する政策を
求めたいと思う。低炭素システムは、気候変動の挑戦にも対抗できる、経済的
にも理にかなった有益な道筋に世界経済を進ませるだろう。聖コロンバン会は
化石燃料への投資引上げを支持する。

食物と水の入手可能性

世界中で農村地域共同体は季節に起こった変化と格闘している。ある国では作
物の成長に不適切な時節に雨が降る。あるいは作物が大きく成長するための十
分な降雨がない。また別の地域では牧畜農家が家畜の水飲み場を探して何マイ
ルも移動を強いられる。脱水と飢餓による家畜の死亡規模は、牧畜農家の生活
ができなくなるほどの重荷になる。食料と水の価格上昇は、農村地域でも都市
でも最貧層の共同体に一番の打撃となる。

順応と緩和

気候変動の影響はあらゆる人々に及ぶが、その一方で貧しさや社会の底辺に生
きる世界中の兄弟姉妹たちはその影響に対して最も弱く、順応する能力が最も
低い。それなのに、こうした人々は地球温暖化を引き起こす温室効果ガス排出
への寄与は最も少ない。気候変動に最も貢献してきた国々と産業が、クリーン
非化石燃料技術を優先させる方針に転換することで炭素排出を削減する責任を
負うとわれわれは信じる。それは南側の開発途上諸国に利用可能にすることだ。
順応と緩和の方策は、経済的に貧しい国々が気候変動の最悪の影響に対処する
のを援助するという役割があるが、焦点は地球温暖化の根本原因への対処に置
くべきである。すなわち、もっと豊かな国々での過度の開発、持続不可能な消
費活動と生活様式などである。

破壊的な言説

気候変動を否定するような破壊的な言説が、気候変動に立ち向かうコミットメ
ントを弱めることを聖コロンバン会は懸念する。実業界が多くの学術・政府機
関および影響力あるメディア組織を乗っ取ることで、企業利益が公共善より優
先されるのを意識するのは大切である。

聖コロンバン会の対応

気候変動は、近年の人間の歴史のなかでも前例のない問題で、地球上の命のあ
らゆる側面に影響がある。気候変動の重大さ、深刻度、緊急性を十分評価する
のは難しい。われわれ聖コロンバン会は、教皇ヨハネ・パウロ2世の言葉にも
あるように、“環境保護のための回心(ecological conversion)”へと召し出され
ている。気候変動という危機に対するわれわれの対応は預言者的にならねばな
らない。つまり貧しい者たちと、この惑星にとっての福音であることだ。聖コ
ロンバン会は、神の創造である地球の生物全体との適切な関係を取り戻すため、
特に以下に掲げる重要な対応に熱心に取り組み、これを要請するものである。

環境保護のための回心

われわれの伝道における召出しは、環境保護のための召出しを含むと信じる。
それは貧しい者たちおよび地球生物と連帯することで、われわれが選んでいる
簡素な生活様式を絶えず見直し、更新し、あらゆる地球生物との適切な関係に
入れるための選択をするようわれわれを駆り立てる。環境保護のための回心と
それを支える創造に中心を置く神学は、個人的にも共同体的にも生じる、持続
中のコミットメントであると認識しており、地球生物の完全性に対する預言者
的証(あかし)を提供するため、われわれの行動と霊性を通して熱心に努力す
るものである。

教育

聖コロンバン会は、社会と特にカトリック教会に気候変動問題の重大さとその
帰結、他の問題とのつながりを理解してもらえるよう努力する。われわれはカ
トリックの小教区、学校、機関および個人や家族のために「見る- -判断する- –
行う(See-Judge-Act)」方法を活用した教材を開発・準備している。地球温暖化
に対抗するため何ができるかについてであり、われわれの信仰とカトリックの
社会教説に基づいたものである。これは意識を高めること、政治・企業活動分
野での提唱運動、生活様式転換と礼拝についての考え方を含む。メディアの誤
った情報や偏見に異議を申し立てることになる。

持続可能な経済モデル

聖コロンバン会はあらゆる命の尊厳を尊重する、持続可能な経済モデルを支持
する。盲目的な経済成長の追求に取って代わるモデルを目指して活動する組織
への支援も関係するだろう。エネルギーと物資の流れが環境を壊さない範囲内
に保たれる経済モデルを目指して、そしてより公平な富の分配、金融制度改革
ならびに社会事業促進に向けてわれわれは活動する。

再生可能エネルギー源

自然界はその相互関係性と再生という本質によって、われわれに持続可能な生
活の方法を教えてくれる。われわれと自然界との関係は互いにつながり合うも
のであると理解する時、生き物の構成要素は人間が消費する資源として見るの
ではなく、神との交わりの表現であるとわかるようになってくる。そうである
なら、地球生物とのわれわれの関係は尊重の関係になり、風力や太陽光、地熱、
水力、波力などによる発電という代替エネルギー探求にわれわれは促される。
それは生命サイクルを尊重し、より少ない物で生活し、自然界と調和して生き
ることをわれわれに教える。

諸宗教間の協力

気候変動は世界的な影響があるので、われわれは他の信仰伝統の人たちと尊敬
しあう対話と預言者的なあかしの精神において一緒になる。土着的霊性を含む
他の信仰をもつ人々との対話を通して神の物語の充満さが啓示され、互いを傾
聴することで、他宗教、他民族の人々の真理に基づく叡智を知る。現在、他宗
教の人々は気候変動問題について、それぞれの信仰伝統のやり方に着想を得て
取り組んでいる。彼らと一緒に取り組むことで、有効性増大の可能性と、共同
作業につながる意識拡大がもたらされるかもしれない。

社会的責任を負う投資

共同体としてのわれわれ聖コロンバン会は、託された資源を世界の生き物のた
めに使用するよう召し出されている。(2) 倫理的社会的に責任ある金融資産の
利用と投資をもって、われわれは[社会的課題の解決を図る]ポジティブ・イ
ンパクト投資や、自然界搾取や人間生活の尊厳を軽視する企業(特に化石燃料
企業、採取産業、軍需企業など)への資産投資停止といった、多様なアプロー
チに全力を傾ける。エキュメニカルな、諸宗教間の協調を発展させることで、
気候変動が倫理的課題であるとわかる信仰者の声が聞こえるようになるのであ
る。近年、化石燃料関係を排除した投資ポートフォリオが、化石燃料関係を含
むものと同等の実績をあげ、時には上回ってもいる。

簡素な生活様式

貧しい者たちと地球生物のために生きるという選択によってわれわれは、非常
に脆弱で傷つきやすい共同体や自然界との関係を意図的に生きるよう招かれて
いる。われわれは過剰消費や化石燃料依存という自分たちの生活様式を検討し、
あらゆる地球生物との適切な関係に生きるという環境保護の召出しによって導
かれた生活様式を選ぶよう厳しく求められているのである。

  • 注 (1) 聖コロンバン会 2012 年総会決議、「交わりに召し出されて」p6。
  • 注 (2) 「交わりに召し出されて」p17。 2012 年総会
  • 聖コロンバン会設立・支援プロジェクト:
    • ペルー
      • ハッピー・アース・ワーム・エコロジカル・センター)
    • フィリピン 
      • ネグロス・ナイン・ファウンデーション
      • エコゾイック・リビング・アンド・ラーニング・センター
  • 提唱と教育のための聖コロンバン会センター
    • オーストラリア
      • コロンバン・ピース・エコロジー・アンド・ジャスタス・センター
    • チリ
      • チェントロ・ミシオネロ・コルンバーノ
    • 米国
      • 提唱と奉仕のための聖コロンバン会センター
  • 聖コロンバン会の著作・支援による資料
    • オーストラリア
      • チャールズ・ルー神父 SSC — 御子を輝かせる
      • 地球の恩寵
      • 森林の恩寵
      • 森林の道行き
    • 英国
      • 紛争と気候変動 DVD
      • 熱帯雨林の道行き
    • アイルランド
      • ショーン・マックダナー神父 SSC『気候変動 われわれすべてへの挑戦』、
      • 他に数冊、信仰とエコロジーについて
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