採掘産業

採掘

そのほかにも、弱く無防備な存在があります。それはしばしば経済的利益に翻弄され、無
差別な利用に供される存在です。つまり被造物全体のことです。

教皇フランシスコ 使徒的勧告『福音の喜び』215

地球はわれわれに共通の家で、神が人間およびあらゆる被造物との契約を結んだ場所であ
る。相互の関係性を考慮せず、被造物の現実の間に神が定めた調和を無視することは、創
造主に対する罪であり、生物多様性への攻撃であり、究極的にはいのちそのものに背くこ
とである

ラテンアメリカ司教会議 アパレシーダ 125
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採掘産業

聖コロンバン会は、採掘産業が引起している天然資源の広範な枯渇と環境破壊の増大する
脅威を注視している。多数の多国籍企業、政府、国際開発金融機関が推進する、天然資源
の集中的開拓を基本とする開発モデルにわれわれは異議を唱える。こうした天然資源の大
部分は再生不可能で、採掘される国々では依存的情況が生まれる。この開発モデルは自然
界を商品化し、神のあらゆる被造物のために意図された調和と均衡の関係を乱すので、し
ばしば社会的対立や人権侵害を生じ、生物多様性を危険にさらす。
取り残されてきた地域社会や、搾取されてきた自然界と共に生きるというわれわれの宣教
活動の経験は、聖書とカトリックの社会教説からの見識および経験的科学を伴って、被造
世界との正しい関係を回復する方法の追求へとわれわれを駆り立てる。被造物中心の神学
によって見えてくるのは、倫理的態度を取るべきなのは、神および他の人々とわれわれと
の関係だけではもはやなく、神のあらゆる被造物との関係も入れなければならないことで
ある。

聖コロンバン会の懸念

水質と水利用への脅威

水はいのちにとって不可欠である。採掘産業は河川流域・分水嶺をますます破壊し、産出
活動のためにいっそう大量の水を必要とするので、優先されるべき人間や農業・環境の必
要性と競合するようになっている。水質汚染と流域の損害・枯渇は、自然界と人間界の双
方に極端な脆弱性をもたらすことになる。

未開拓領域への拡大と多様性の喪失

高まる天然資源の需要が生み出しているのは、開拓・採掘に使用される新技術、国際市場
での高価格、多国籍企業に採掘権を供与する国々への経済的法律的なインセンティブとあ
いまって、採掘産業が未開拓領域に大幅拡大する状況である。それは河川の源流域、氷河
系、森林、山頂、深海平原、原住民の先祖伝来の土地、小作農の農村、自然保護地域など
である。これによって原初の状態にあるユニークな生態系の生命や、その土地の経済活動、
伝統的文化、水の供給が危険にさらされる。漁業、農業、林業も採掘産業の新しいやり方
によって変容させられる。バイオ燃料やバイオマスの需要と肥育させた家畜類の需要があ
り、従来からの富裕国と新興富裕国の食肉需要を満たすためである。

誤った解決策

鉱物、石油やガスを日常的に入手・利用することはいっそう困難になる。こうした資源が
集中的に埋蔵されているのは海底でも地下でもさらに深いレベルなので、より多量のエネ
ルギーがなければ採掘できず、それに伴って排石など大量の廃棄物が出る。採掘と資源加
工の技術的難点が明白になるので、採掘産業は新しい技術と方策を開発して資源採取をや
りやすくする。それは水圧破砕、脱塩、遺伝子組み換え作物の単式農法などであり、これ
らすべての方法は環境への潜在的影響について懸念を抱かせる。このような技術は水、電
力、農薬などエネルギーや資源を大量に必要とする。もたらされるのは水供給の汚染、炭
素排出量の増加、そして地域社会への社会的文化的抑圧の増大である。

採掘産業は人間と自然へのダメージ緩和の方策によって、みずからのイメージを環境に優
しいものにしようとしているが、そこには問題のあることが多い。たとえばカーボン・ク
レジット[CO2 排出権取引]、カーボン・オフセット[CO2 排出量に見合う金額を CO2 削
減対策費用として支出]などの方策は、統合的な排出削減戦略の一環として実施されない
限り、企業、政府、関係機関、個人が政策・生活様式の変更なしに有害な資源依存を続け
ることを許してしまう。

「御誂えの」法律

採掘産業はその活動を容易にするよう企図されることのある法律体系の恩恵を受ける。世
界銀行や国際通貨基金などの国際開発金融機関の勧告に促され、二国間・多国間貿易協定
を通して法的枠組みが改変され、採掘産業が不釣り合いなほどの利益を享受することにな
る。例えば、チリやアルゼンチンでの山頂を除去する採掘方法が禁止されていたのは、バ
リック・ゴールド社の起草によるチリーアルゼンチン二国間協定が2000年に署名され
るまでだった。パスクア・ラマとして知られるこの協定は、氷河の生態系、源流域に影響
を及ぼし、下流の地域社会の健康な生活状況を危険にさらすとして以前は禁じられていた
鉱山計画を許可してしまった。同様にTPP(環太平洋パートナーシップ)などの貿易協
定は、国が適用する労働者・環境保護の方策の結果生じた収益損失について、政府に対す
る訴訟を起こす手段が準備されている。

脅かされる文化と人権

採掘産業が急増する多くの地域社会では不平等が増大する。企業幹部は労働者を犠牲にし
て高給を得ることが多く、地域社会の収入源や地域経済は弱められる。暴力行為、売春関
連犯罪、薬物乱用の増加傾向から、地域連帯のネットワークは脅かされ、現地住民や農民
は自分たちの土地を失い、環境汚染や破壊に直面して都市へと移動を余儀なくされるので、
それまでの生計手段を続けることができなくなる。社会の対立は増え、多くの場合で政府
や企業は正当な異議申し立てを犯罪扱いしたり、抗議行動のリーダーの生命を危険にさら
すことで、反対派を黙らせようとする。

聖コロンバン会の対応

対立のある地域社会との連帯

聖コロンバン会は採掘産業による影響を受けている国々で生活し活動して、採掘事業と関
連づけられる人的酷使と環境の不正利用を直接見聞している。われわれは採掘産業反対の
立場をともにする他の修道会や原住民、地域社会リーダーたちと同様、脅しを受けてきた。
極端なケースでは抗議した修道会や原住民、地域社会のリーダーが殺されることもあった。
われわれは地域社会を支えるため、教育と動員活動を支援し、提唱活動やその他の連帯努
力を通して、われわれの国際共同体とつなぐ働きをする。原住民であることの多い地域社
会リーダーが鉱山会社への反対の声をあげる時、殺される標的にされるということを聖コ
ロンバン会は何度も目の当たりにしてきた。

変革の提唱

聖コロンバン会は鉱山会社が本社を置く国々や貿易協定が交渉される国々においても生活
し活動してきた。われわれが採掘産業の影響下の国々やその政策や活動が決定される国々
に存在することは、地域社会の声ならびに聖コロンバン会と提携団体の生きた経験を、企
業幹部の会議室や立法府にもたらす比類のない機会を提供している。経済的・環境的不正
の根本原因に取り組む統合戦略の一環として、われわれは構造変化のための活動に専心す
る。政府機関、公共政策立案者ならびに企業との対話を通して、われわれは体系的変革へ
の影響を及ぼし、提唱活動と教育によって地域社会が自分たち自身の物語を語ることがで
きるようにしたいと考える。

異宗教間の協力

聖コロンバン会は他の信仰伝統をもつ人々や団体の中から、採掘産業への抵抗など、環境
問題に活発に関与する者たちを探し出し、われわれの努力の有効性を高めたいと思う。宗
教的価値観に動機づけられた人々が力を合わせることで信念をいっそう強くし、さらに多
数の人々に働きかけ、提唱活動の信頼性を増すものとなる。

信仰の形成

信仰ある人々や共同体を、カトリックの社会教説の見方を通して社会・環境問題について
の理解と行動へと招くことは、聖コロンバン会の使命の不可欠な一部である。信仰形成が
行われる機会は多様で、教区、学校、大学、宣教センター、短期の宣教奉仕、インターネ
ットや出版物などがある。

社会的・環境的に責任ある投資活動(SRI)

宣教活動の会であるわれわれに託された資産は、世界のいのちのために使うよう求められ
ている。金融資産の倫理的・社会的責任ある利用と投資による多様なアプローチに委ねる。
ポジティブ・インパクト[社会的・環境的に肯定的影響のある]投資のほかに、投資資金
引き揚げもあり、特に石化燃料、採掘産業、武器製造など自然界搾取や人間のいのちの尊
厳軽視がみられる企業を対象とする。

聖コロンバン会は、米国に本拠を置く「企業責任のためのインターフェイス[異宗教間]・
センター」のメンバーであり、イギリスに本部のある「企業責任のためのエキュメニカル・
センター」に参与することで、社会的責任ある投資と企業活動提唱に広く関与している。

出版物および意識を高める活動

インターネットおよび印刷出版物によって、聖コロンバン会は批判的考え方、行動、祈り
に満ちた内省を呼びかける。例として以下を挙げる。

ネットワーキング

国際
国内
詳細紹介先:
エイミー・ウーラム・エチェヴェリア
正義・平和・被造物保全のための国際コーディネーター
amywe@columban.org
1.301.503.9222/skype awe0106
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