移住

移住

移住者と難民は、人類というチェス盤上で操られる駒ではありません。
彼らは、さまざまな理由により故郷を出たり、追い出されたりした男
女や子どもたちです。彼らも当然、知ること、持つこと、そしてとり
わけ、より大きな存在になることを望みます(1)。

教皇フランシスコ
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移住

聖コロンバン会伝道者は、社会や世界から取り残された人々および搾取された
地球との連帯によって表された対話を通して、癒しと和解をもたらし、橋を架
け、相互理解を生むために召し出されている(2)。2000年以降、聖コロンバ
ン会は、特別なやり方で「移住者に寄り添い、その権利を守り続けること」、
そして様々な人々の移住の根本的な原因に対処することに熱心に取り組んでい
る。

聖コロンバン会は、経済的に貧しく社会的に取り残された世界の諸共同体に仕
える。それは貧困、不正、気候変動による災害、武力紛争、宗教的迫害、異民
族間または政治的な迫害のために苦しむ国々に存在することが多い。こうした
状況が経済の安定、人間の安全保障を求める人々に故郷を離れ、移住するよう
駆り立てる。あらゆる場所での移住者ニーズへの奉仕と同時に、人々と家族が
故郷に留まる選択も持てるよう移住の根本原因への取組みにもわれわれは召出
されていると信じる。

聖コロンバン会は、神の最も弱い民のニーズを満たすために世界中どこでも移
動・移住しながら移住者たちの苦しみを目の当たりにしてきた。彼らをこころ
よく迎え、彼らに仕え、彼らの側に立つことを願いながら、人間の尊厳を保護
するために取り組む必要のある以下の懸案事項を概説する。

聖コロンバン会の懸念

根本原因

移住者の数は[2000年の]1億7千5百万人から現在の推定2億3千2百
万人に増加している(3)。一部は人口増加によるが、貧困、不正、気候変動、武
力紛争が原因である場合がもっと多く、世界中の何百万の人々が居住地から追
いやられ続けている。過去30年で、世界中の移住者数は2倍以上のほぼ2億
人になった。(4) この数字は、家族を養うために移動を迫られた経済的理由によ
る移住者、難民、そして迫害や自然災害から逃れた国内避難民を含む。気候変
動関連の人々や人身売買の被害者も含まれる。女性とこどもがますます移住者
の大部分を占めている。われわれは高い生活の質を求めるための移住の権利を
認めるが、世界の経済政策が深刻な不平等や過酷な労働状況をもたらして、
人々に故郷を離れさせる場合が多くある。

貧困と経済的な圧力要因

移住者の圧倒的多数は経済的理由によるもので、元の居住国に留まるという選
択はほとんどもたない。世界の2億人の移住者のうち、3千万から4千万は不
法滞在である。10年前、5億5千万の人々は仕事があっても一日あたり1ド
ル以下で生活していた。その一方、世界の28億人の労働者のほぼ半数が一日
2ドル以下の稼ぎだった。(5) 現在こうした数字は大きくなっているが、持続可
能で公平な開発・発展より企業収益を優先する貿易や投資の協定によるところ
が多い。移住を強く駆り立てる誘因は、食料不足、失業、低賃金、さらにまっ
とうな仕事の不足とあいまった受入れ国の雇用機会見通しである。

気候変動による移住者

自然災害から逃れる人々は増加しているが、人類が引き起こした気候変動によ
る災害は頻度も激しさも増している。5年前、環境要因により推定2千5百万
から5千万の人々が移住を余儀なくされたが(6)、その数字は2050年までに
1億5千万人に上るとされる。(7) 地球温暖化と気候変動は、地方経済に負担を
かけ、欠乏する資源を求めて命がけの紛争につながるような環境状況をもたら
す。ハリケーン、台風、砂漠化、旱魃、海面上昇、熱帯雨林とサンゴ礁の消滅
は、生命体の網の目を脅かし、「気候変動難民」を生む。

戦争と紛争

毎日のように何百万もの避難民が家を離れ国境を越えて、居住地域で起きた戦
争や命を脅かす紛争から逃げている。(8) 年々さらに何百万人もが宗教的・政治
的迫害から自分と家族を守るため移住に追い込まれる。暴力暴行が地域のお粗
末な、あるいは腐敗した警察や司法制度に帰する場合は特に、安全保護の欠如
のため影響を受ける人々が移動する。天然資源をめぐってますます戦争や紛争
が起きている。石油、貴金属、食料や水をも含むそうした争奪戦は、ある国連
幹部に「21世紀の戦争は水のために戦われるだろう。」と言わせた。(9) 宗教
間・民族間紛争はとりわけ命がけとなり、その結果、多くの死者や壊滅的状態
を出す。

聖コロンバン会の対応

見知らぬ人を迎え入れる

移住は、現代における主要な社会的事象の一つ、つまり「われわれの時代のし
るし」である。福音書は、われわれがキリストを歓迎するように移住者を喜ん
で迎え入れるよう促している。

(マタイ 25 章 35 節)

世界中の十数か国以上、アジアの台湾・フィリピンから南北アメリカ大陸のペルーやメキシコ、そしてわ
れわれの会のルーツであるアイルランドと米国において、「聖コロンバン会は移住者、避難民、亡命希望者の苦しみの声に耳を傾け、それに応えてきた。この分野の活動によって、われわれは活力と恵みを授かってきた」(『強く勇気を
もって』2006)。われわれは「移住者に寄り添い、その権利を守り続けること」に力を注いでいる(『交わりに召し出されて』2012)。

根本原因に対処する

強制移住には多くの原因がある。貧困、食料不安、気候災害、暴力紛争、宗教
的・政治的迫害が含まれる。現在取られている外交方針・政策はこのような根
本的原因を変えようとするより、温存してしまっていることがあまりにもよく
ある。各国の政府は持続可能な開発目標、債務・貿易政策、国際金融制度改革
を推進することで、移住の根本原因に対処し、人々が元々の地域共同体に留ま
れるようすべきである。とりわけ企業の採掘活動や農業関連産業のような、土
着共同体を破壊し地球を荒廃させる行為を終わらせなければならない。そして
より公平で持続可能な開発モデルを推進しなければならない。

人間の尊厳と人権を守る

政府は臨時雇用労働者のための人道的なプログラムを作成すべきで、非臨時労
働者が受け取るものと同等の給付を含める。それには生活賃金、安全でまっと
うな労働条件も入る。プログラムに含めなければならないのは、被雇用者の雇
用主間移動を認める査証・労働許可証規定、借金による束縛およびブローカー
手数料水増しの禁止、契約不履行に対する雇用主の厳しい反撃に関連した労働
者権利保護である。定期的な監視と実施が重要な鍵となる。

家族の再統合とこどもの保護

われわれは教皇ベネディクト16世の移住政策の呼びかけに同調する。それは
「個々の移住者とその家族のニーズと権利を守り、同時に移住先の国々のニー
ズと権利をも守ること」を目的とする政策である。[旅券・査証など]法的に
必要な書類の不備は、恐れ、不安、弱みを感じさせる生活環境に移住者を置く。
公正で温情ある移住者政策である必要がある。移住者、特に保護者の同伴がな
い未成年者に対して保護と支えを与えることで、家族が再び一緒になれるよう
にする。移住を犯罪とみなすこと、国境での軍隊配置、移住者の送還措置は家
族を引き裂くものである。

気候変動による移住者

われわれは炭素ガス排出の削減を求める。現在のエネルギー利用方法が地球温
暖化を助長し、環境を危うくしている状況を気遣うからである。われわれは米
国および他の国々に、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の提案を忠実に
実行するよう求めている。その提案は、地球共同体が持続可能であり続けるた
めには排出を2020年までに25から40パーセント削減、2050年まで
に最低80パーセント削減して、基準となる1990年のレベル以下にしなけ
ればならないとする。

諸宗教間対話

難民、移住者であれ、亡命希望者であれ、諸民族の移動はあらゆる信仰伝統を
もつ共同体にとってひとつの現実になっている。受入れる国や共同体では、宗
教的寛容があまり実践されないような状況もしばしばありえる。それに対して
われわれがもたらそうとしているのは、人々、特に移住者が自由にそれぞれの
信仰の慣習を行い、他の信仰をもつ人々と語り合える場所や空間である。われ
われの信じる神の愛の普遍性のあかしとして、これを行っている。

    • (1)教皇フランシスコ、世界難民移住移動者の日メッセージ 2013年
    • (2)聖コロンバン会2012年総会決議 『交わりに召し出されて』p6
    • (3)国際移住機構 「国際移住者デー」(2013)
    • (4)国際的移住問題に関する世界委員会(GCIM)、「相互に関連する世界の移住問題 – – 行動への新しい方向性」(2005)11
    • (5)同上
    • (6)ポーク、T.、「気候変動と強制移住」 P.マクマラン編『チェンジ‐‐現代の使命への課題』所収(韓国)102
    • (7)ヴィダル、J.、「地球温暖化で20500 年までに1億5千万人の‘気候変動難民’出現の可能性」英ガーディアン紙2009年11月3日
    • (8)国連高等難民弁務官事務所(UNHCR)は2012年に世界で1千80
    • (9)イスマイル・セラゲルディン、世界銀行元副総裁、ニューズウィーク誌1995年万人の難民と、2千8百80万人の居住国内での移住に追い込まれた人々がいたと推計する。
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